8月17日(土)より新宿K's cinemaほか 全国順次ロードショー

Introduction

社会に馴染めない兄と、未来を諦めた父。そして、家にしばられる妹。そんな三人が踏み出す小さな一歩を描く。

ある日突然、平穏な日常を一変させた東日本大震災。地震と津波だけでなく、原発事故により多くの人が家や仕事を失い、福島の地を去っていった。これはその3年後、深い傷跡の残る福島で、余波の中を生きるある家族の物語――。

メガホンを取ったのは、これまで助監督として数多くの作品に携わり、2022年公開『ダラダラ』で長編映画監督デビューを果たした山城達郎。2014年に竹浪春花が書いた脚本を気に入り長年温めていた企画が、日本芸術文化振興会の若手映画監督支援に選出されたことで実現。厳しい現実をしなやかに生きる家族の姿を、幻想的な表現も交えつつ現実味のある手触りで描き出した。

主人公の心平役に抜擢されたのは奥野瑛太。
数々の映画・ドラマで研鑽を積み、本年だけでも『バジーノイズ』、『湖の女たち』、『碁盤斬り』など、次々と話題作に出演する演技派俳優だ。奥野は軽度の知的障害者という役柄を演じるにあたり、監督と共に専門家へのリサーチを行い、慎重に「心平」という血の通った人物を作り上げていった。

心平を自立させることに熱心な妹、いちごを演じたのは、『ダラダラ』でも存在感のある演技を披露した芦原優愛。
そして彼らの父親、一平役には『なん・なんだ』(22年)で主演を務めた下元史朗。
実力派が集い、世界の片隅で機能不全に陥る家族を見事に体現した。

震災後の福島を扱うにあたり、山城監督はロケーションにもこだわった。自らの足で福島県各地をめぐるロケハンを行い、時に撮影地に合わせ脚本も変えながら全編を福島県で撮影。空っぽの家や荒れた畑、天文台など、印象的なシーンもすべて現地の人に協力を仰ぎ、被災地でしか撮れない画をカメラに収めていった。

『心平、』に真実味が宿るのは、俳優陣の名演に加え、嘘のないアクチュアルな映像が絶えず画面に存在するからであろう。
そこには、いまだ続く震災の影響を映画という記録を通じて伝えたい、という山城監督の願いが込められている。

Story

世界から置いてきぼりをくらったような日本のすみっこ。
雑草だらけの田んぼに空っぽの家、小さな天文台と海、それに原発。
たったそれだけが私たちの世界だった2014年の夏。
捨てられたようなこの町で、心平はグルグルグルと歩きまわる。

福島のある小さな村に住む心平は、幼い頃から通っている天文台で働く妹と、兼業農家の父を手伝いながら暮らしていたが3年前に起きた原発事故によって農業が出来なくなってしまった。
以来、職を転々としてきた心平は、今は無職である。

父・一平は、そんな心平に軽度の知的障害があることに向き合えないでいる。小遣いをやるだけで、息子の未来のことを諦めている一平は、不本意な自分自身のことも酒でごまかしていた。
妹・いちごは、そんな呑んだくれの父と働かない兄のために家事をする日々に、ウンザリしている。母は、自分を産んですぐに家を出ていったきり、帰ってこなかったという。私たちは捨てられたのだ。と、いちごは、全部を恨んでいる。

そして、近所の住民から心平が避難中の家々で空き巣をしているらしい、と聞いたいちごと一平は、家を出たまま帰ってこない心平を追いかけてある場所へとたどり着く。そこで見たものは、思いがけない光景だった――。

Cast

Staff

監督山城達郎Tatsuro Yamashiro

1986年生まれ、沖縄県出身。
日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。映画学校在学中のクラス担任であったサトウトシキに師事する。
卒業後はフリーの助監督して、石井岳龍監督、廣木隆⼀監督、青山真治監督などの助監督に就く。2022年、『ダラダラ』は初監督作品。他、BS松竹東急「カメラ、はじめてもいいですか?」5・6話の監督を担当。

脚本竹浪春花Haruka Takenami

1989年生まれ、静岡県出身。
日本映画学校(現:日本映画大学)卒業。映画学校在学中に執筆した映画『イチジクコバチ』(11/サトウトシキ監督)で脚本家デビュー。
以降、『なんでも埋葬屋望月』(15/いまおかしんじ監督)『もっとも小さい光』(21/サトウトシキ監督)など、映画脚本を執筆する。近作は児童書『ドレスアップ!こくるん』(原作・監督:久野遥子)シリーズの文を担当している。

プロデューサー田尻裕司Yuji Tajiri

1968年生まれ、北海道出身。
97年『イケイケ電車 ハメて、行かせて、やめないで!』で映画監督デビュー。以後、映画・テレビドラマ・Vシネマなど監督。二作目の映画『OLの愛汁 ラブジュース』は、ピンク大賞の年間最優秀作品に選ばれ、監督賞も受賞。近年の作品は、『こっぱみじん』(13)、『愛しのノラ〜幸せのめぐり逢い〜』(17)。ドラマでは「おふろやさん日和1・2」。プロデューサーとしては、『ダラダラ』(20/山城達郎監督)、『二人静か』(23/坂本礼監督)に携わる。
2009年に映像制作会社・冒険王を設立。『こっぱみじん』以来11年ぶりに、冒険王製作2作目『心平、』を完成させた。

プロデューサー坂本礼Rei Sakamoto

1973年生まれ、東京都出身。
瀬々敬久に師事し、数十本の国映作品の助監督を経て、『セックスフレンド 濡れざかり』(99)で監督デビュー。以降の主な監督作品には『いくつになってもやりたい不倫』(09)、『乃梨子の場合』(15)、『夢の女 ユメノヒト』(16)、『二人静か』(23)など。13年からプロデューサーとしても活動し、主なプロデュース作品に『れいこいるか』(19/いまおか しんじ監督)、『激怒』(22/高橋ヨシキ監督)、『間借り屋の恋』(22/増田嵩虎監督)、『ダラダラ』(22/山城達郎監督)、『天国か、ここ?』(23/いまおかしんじ監督)などがある。

プロデューサーいまおかしんじShinji Imaoka

1965年生まれ、大阪府出身。
瀬々敬久、神代辰巳らの助監督を経て、『彗星まち』(95)で監督デビュー。以降、11年にはクリストファー・ドイルを撮影にむかえた日独合作映画『UNDERWATER LOVE -おんなの河童-』を発表。
代表作に『たまもの』(04)、『れいこいるか』(19/「映画芸術2020年日本映画ベストテン」第一位を受賞)。近年の作品には『遠くへ,もっと遠くへ』(22)、『あいたくて あいたくて あいたくて』(22)、『天国か、ここ?』(23)、『道で拾った女』(23)、『愛のぬくもり』(24)など。脚本家としても活動しており、『苦役列車』(12)、『銀平町シネマブルース』(23)、『化け猫あんずちゃん』(24)などがある。

Trailer

Interview山城達郎監督インタビュー

『心平、』の企画はいつ頃からスタートしたんでしょうか?
日本芸術文化振興会が開催した若手映画監督支援プロジェクトがあったんですが、以前から撮りたいと思っていた脚本 を企画書として応募したところ、選出されて本格的に動き出すことができました。それが昨年の4月です。
10月末までには完成品を日本芸術文化振興会に出す必要があったので、8月末から撮影を開始して、かなりタイトなスケジュールで進めていきました。
軽度の知的障害者である心平を描くうえで気をつけたことはありますか?
僕としては同じく軽度知的障害者が主人公のイ・チャンドン監督『オアシス』(2022)を初めはイメージしてましたが、心平をどう表現するかは演じる奥野さんと慎重に検討を重ねていきました。その分野に詳しい文教大学の茂井万里絵准教授ともいろいろとお話をしてアドバイスも頂きました。
軽度知的障害と一口に言ってもグラデーションがあるので症状や個性もそれぞれ違うんです。ただ多くの場合、軽度知的障害者の人にとって自分の意見を主張することはすごく難しいことだと知りました。だからこの作品は最後に心平が自分の意見を言えるまでの物語、として進めていったんです。
全シーン福島県で撮影を行われたそうですが、ロケ地はどのように探されたんでしょうか?
今回は予算やキャスティング、スケジュールまで僕が全部決定権を持っていました。
ロケ地に関しても自分が決められるなら撮りたいところを探そうと思って、一人で可能な限り福島中を運転してロケハンを行いました。福島県のフィルムコミッションにはすべてお声がけしましたし、コネクションを活用して現地の方にもかなりご協力頂きましたね。劇中の空き家や荒れた畑もすべてその土地の人から許可を頂いて撮影した実際の被災地の光景です。
基本的には舞台となった浜通りで撮影を行ったんですか?
浜通りだけでなく、内陸から海岸部まで福島県全土で撮影しました。そこでしか撮れない映像を意識して、時に撮影地に合わせて脚本を変えていきました。たとえば重要な役割を果たす天文台も、元の脚本ではガソリンスタンドだったんです。心平といちごで共通する好きなものを作りたいなと思っていたところに、立地的にぴったりな天文台を見つけて、是非使いたいと交渉したら快く許可を頂けました。
心平の小屋も当初は防空壕の予定だったんですがそれは流石に見つからずで(笑)。でも最終的に今のかたちに変えたおかげで、当初の脚本より希望が持てる作品になったと思います。
主演の奥野瑛太さんはどのようにキャスティングされたんでしょうか?
奥野さんが出演していた『激怒』(2022)という映画に僕も助監督として参加していて、すごく真摯に役に向き合う真面目な方だという印象を抱いてました。それで心平という難しい役を任せるなら奥野さんが良いなと思い、最初にお願いしました。
受けてくれることにはなったんですが、俳優部として演じる上で心平の描写に気になる部分があるとのことで、お会いして意見を伺いながら脚本を修正していきました。
芦原優愛さん、下元史朗さんのキャスティングの経緯も教えてください。
芦原さんは『ダラダラ』(2022)でも主要人物を演じてもらったんですが、前作と同じ人と仕事をしたいという思いがありまして。加えて今回はタイトなスケジュールで演じてもらうということもあり、既に信頼関係のある芦原さんにお願いしました。
下元さんは、学生時代からの先輩である山嵜晋平監督がメガホンを撮った『なん・なんだ』(2022)で主人公を演じている姿を観て、一緒に仕事をしたいなと思って出演をお願いしました。
長編二作目となる本作で何かチャレンジしたことはありますか?
『ダラダラ』は現実的な作品でしたが、『心平、』ではそこにファンタジー的な要素を加えるよう意識しました。この題材をリアルにしすぎると辛い作品になりかねないので、現実をそのまま落とし込むことはしたくなかったんです。現実が辛いぶん、映画を観て良かったなと思ってほしくて。カメラマンの藤田さんが一人体制の中、うまくファンタジー的な雰囲気を映像に込めてくれました。
本作を観た人にどんなことを受け取ってほしいですか?
僕は映画って「記録」だと思うんです。人の記憶はどうしても時間と共に変わったり薄れていきますし、震災という大きな出来事ですら12年も経って段々と曖昧になることもあると思います。原発もいろんな問題がまだ山積みのまま続いているということも、日常に追われて忘れていたなと今回撮影して改めて思い出しました。
時には前に進むために忘れることも必要だと思うのですが、それでも忘れてはいけないことってあると思うんです。そのためにも映画という記録を残していきたくて。それが観た人の中で、記憶として残ってくれると嬉しいです。

Comment

Coming Soon.

Theater

東京
新宿K's cinema8/17(金)~